『まったく最高の日だった』セルフライナー

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    このアルバムは「マーガレットズロースの20周年を勝手に祝う」という

    うたい文句で宣伝されているが、本当は重要なのはぼくがメンバーと離れて九州へ移住し、

    遠距離バンドとなった2011年からの5年間の集大成であること。
    その5年間で最も大きな出来事としてギター熱海裕司のバンド加入があった。

    それがあまりに自然であったためあまり意識されることはなかったが、

    熱海くんが加わった4人のマーガレットズロースで鳴らすロックンロール

    というのがこのアルバムの柱だ。

     

    この5年、ライブの本数は極端に減ったが、

    ライブ以外でメンバーが集まることはほとんどなかった。

    つまりほとんどスタジオで練習しなかった。
    それでもマーガレットズロースはライブの度にその生命力を増していくようだった。
    それまでマーガレットズロースにとってスタジオはある意味鍛錬であったり、

    自分では思いつかないことを模索する場所だったが、

    この5年間はできないことはやめるしかなかった。

    思いついたことをできるようにやるだけだった。

    それは20年のバンド活動でもっとも幸福な時代だったのかもしれない。
    たのしいことだけの5年間をかたちにする。

    それがこのアルバムのもう1本の柱といえるが、2本の柱はお互いに同じことを意味していた。

     

    今回レコーディング前日にはじめてバンドでアレンジするというような過酷な状況もあったが、

    それでもあきらめずに完成することができたのは、

    いつもマーガレットズロースに命を注ぎ続けてくれた人たちがいたこと。

    これは本当におおげさでなく、「平井くんは音楽をしなきゃいけない」

    「マーガレットズロースの新しいアルバムをずっと待ってる」

    そんなメッセージをずっとかけ続けてくれた人たちのイメージがかたちになったんだと感じる。

     

    スタジオでああだこうだとアレンジやサウンドに悩むのは

    一番最初に曲をイメージした時の「あの感じ」をどうすれば表現できるのか、

    具体的な手段を見つけるのに時間がかかるからだと思うけど、

    はじめからメンバーと「あの感じ」が共有できていたら必要以上の時間はいらないのだと思う。

    なにも考えずに出した音が「あの感じ」になる。だれも意識はしていなかったと思うけど、

    そんなふうにレコーディングは進んでいった。


    そんなわけなので「これはこういう意味の曲なんです」って語ることはよそうと思う。

    「あの感じを」ひとりひとりに自由にプレゼントしたい。

    そのきっかけになるような一言や経緯だけ、1曲ずつ紹介できたらと。

     

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    マーガレットズロース『まったく最高の日だった』

     

    01.EAGLE
    熊本県の南関町に住んでいた頃の曲。
    平井正也のソロ音源『ONDO』に収録された時は「高橋くん」というタイトルだった。

    京都の木屋町でバーをやっている高橋の店で初めてうたったのでそんな名前になってしまったが、

    メンバーからは不評でとりあえず「TAKAHASHI」と改題された。

    一曲目になるにあたってさらに高橋の店の名前に変更。

    「高橋くん」になじみのあるリスナーには申し訳ない気持ちだが全部許してほしい。
    そういえばレコーディングでも1曲目に演奏した。
    エンディング、2本のギターの絡みに気分がすーっとなる。

     

    02.ぼくには数えられない
    EAGLEとほぼ同じ時期に出来た曲。

    当時は「なにも考えられない」とか「ぼくたちに明日はない」とか

    「○○ない」という曲が立て続けに出てきた。

    決してネガディブな気持ちでないが否定しなければ強く肯定できない時期だった。
    「ONDO」収録時のアレンジから大きく変っているが、熱海くんの持ってきたリフからの影響。

    とにかく「ジャガジャーン!」を聴いて欲しい。

     

    03.1996
    那須のB&B Garden House SARAで高橋柚一郎くんとライブをした翌日、

    黒磯で過ごした一日の出来事。

    SHOZOさんのコーヒーもチーズケーキも本当に美味しい。

    ほとんど日記の様な歌だが「1996 タイムスリップして 2015年のきみと友達になった」

    の一ヶ所がこの曲を成り立たせている、とは熱海くんの評。
    岡野のベースラインとリズムが真似できない境地に。
    はじめアルバムタイトルとして「1996」も考えていたが、

    粕谷に「わかりにくい、誤解を与える」とされ却下。

     

    04.魔法をかけてあげる
    もしもマーガレットズロースが月に何本もライブをやっていたら、

    全然違う曲になっていたかもしれない。

    でもライブでたくさんやらなかったおかげもあって曲として素直に仕上がった気もする。

    リード曲の定まらないアルバムの中でひとつの完成度の高さを示す楽曲。

    熱海くんのギターとアコギでユニゾンしたソロとBメロのトライアングルが自分で気に入っている。
    「魔法をかけてあげる」もアルバムタイトルとして有力だったが

    岡野に「40のおっさんが魔法をかけてあげるは正直気持ち悪い」とされ却下。

     

    05.たのしいロックンロール
    ほとんど音量を上げる目的にしか使っていなかったディストーションのツマミをがつんとひねり、

    あまりのたのしさに「これはハードロックだ!」と勝手に解釈。

    正直ギターソロのハモりはダサいと思うけどかっこいいと思う。

    自分的NGがどうでもよくなることがバンドを長く続ける醍醐味であり、原動力なんだなきっと。

    曲後半の「オイ!オイ!」のコーラスパート録音はサイコーだった。

    岡野のベースがまだ決まっていない感じが実は好き。

     

    06.奇跡が起きなくて
    前作『darling』以降に、平井正也のソロ音源で発表された曲の中から

    ベスト的な選曲で構成される本作だが、これは今回初収録。

    岡野から「中心になる曲がない」と評価され、

    「そうかな〜けっこういい曲そろってると思うんだけどな〜」といいつつ書き下ろした。
    アレンジ・サウンド面でまだ未完成と思える部分があり今回収録は見送られる案もあったが、

    12曲に強いこだわりがあり、無事収録。

    それにしても「星の王子様」って本当にすごい話。

     

    07.はるかぜ
    マーガレットズロースで演奏したのは熊本県南関町で開催した野外音楽イベント

    「NANKAN ROCK FESTIVAL はるかぜ 2013」以来。とても感慨深い。

    移住後の5年間という意味ではどうしても外せない曲。

    うっかりスカ風のアレンジになるところでしたがなんとか正気を取り戻し無事。

     

    08.さよなら東京
    寝ても覚めても曲を作ることが頭から離れなかった20代前半の頃の気持ちに戻って集中。

    これを仕上げないことには先に進めないという思い。

    メンバーからいまひとつ評価が定まらなかったが、そういう部分は曲として大事。

    「これは絶対いい」とわかるのは実はもう止まってしまっている。

    粘って出来たギターリフですこし堂々とした。

     

    09.斜陽
    マーガレットズロースの20年の中でおそらく最もたくさんライブで演奏された代表曲。

    再録のアイデアは岡野から。はじめ疑問もあったけど、

    熱海くんが入ってからの斜陽を残したい気持ちと、

    「録ってみたらよかった」という単純な理由により収録。

    「他の楽曲と並べたら浮いてしまうんじゃないか」という不安をよそに、

    初録音から13年経ってもまだ新曲のような顔をしている斜陽だった。

     

    10.五七五
    ジョナサン・リッチマンへのリスペクトが伝わるかどうかはわからないが、

    有名な「ロードランナー」のイントロの影響がないとはいえない。

    ライブではお客さんに「しち!しち!」と叫んでもらいたい。

    どうやって歌詞カードで表現するか悩んだ。

    あとどうやって2番の歌詞を思いついたのか思い出せない。

    低い声でうたっているのは粕谷です。

     

    11.なにも考えられない
    メンバーと離れて暮らしながらバンドを続けることで行きついた曲。

    たくさんのミュージシャンから寄せられた感想でも特に触れられることが多かった。

    同じ部屋で同じ機材で録音してもどうして曲によってなり方が違うのか。

    なにも考えられずに「あの感じ」が出まくったのか。

     

    12.うその地球儀
    この曲を中心にしたアルバムをイメージして来たが、

    もはやリード曲自体、なんのことやらよくわからない。リード曲ってなに?
    いままでずっといろんな歌で「忘れること」をうたっていたのが、

    この歌ではじめて「忘れないでね」とうたったのはどういうことか?

    人間がきっと生まれ変わると信じたから?
    粕谷のドラムのセンスが光る一曲。

    一人で何度もうたったり、いろいろな人とセッションしたりしたけど、

    こんなことができるのはマーガレットズロースのメンバーとだけ。

     

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    けっきょく余計なことばかり書いてしまった。余計でないことは書けない部分なんだな。
    「まったく最高の日だった」
    どうぞ聴いてください。
    ありがとう!

     

    photo 宇宙大使☆スター

    club SONIC iwakiでのジャケット撮影時の一コマ。

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