【もう一度僕たちは思い出す マーガレットズロース『NANANA』誕生秘話 その8】
最終回「NANANA」セルフライナーノーツ
ヒライマサヤの主観で勝手に全曲解説!!
1.「バンドパワー」
アルバム一曲目を飾るこの曲を、すべてのバンドマンとバンドマンじゃない人に捧げたい。
「バンド」という繋がりが生み出す奇跡みたいな出来事を感じたことがある人にも、ない人にも。「バンド」のせいですべてが台無しになってしまうかもしれないし、すべてが帳消しになるかもしれない。バンドなんかやっていなければ、ぼくも岡野も粕谷も全然違う人生だったはず。金持ちになってたかもしれない。だけど全然、これ以外興味がわかないよ。
プロデューサーのももちゃんから収録曲についてこんなリクエストが。
「どん底、斜陽にかわるズロースを象徴する曲。今のバンドの状態や環境をズバッと一言で表すタイトルで。」
それで27年続いてきたバンドの今を歌にしようとしたのに、気がついたら組んだばっかりのバンドみたいな歌になっていた。だけど「バンドパワー 」という言葉は発明だ。意味もなく声に出したくなるじゃないか!そう思って意気揚々とバンドでスタジオに入ったら、「ハンドパワーみたい」と笑われてがっかりした笑
リフのアルペジオ、こんなに単純なフレーズだけど、何かに似てるとか似てないとか考えもせずぼくらの発見にした。そして一番大事な歌詞はみんなで「ナナナ」って歌うところだと思ってます。
キーボードで中村圭作さんが参加してくれてます。最後のちょっとだけだけど、かなりバンドパワー 出てるので注目!
2.「瞬キッズ」
ミュージックビデオにもなったアルバムのリード曲。「またたきっず」と読みます。
「夜空を見上げて、遥か遠くの星をのぞいたら、まだこの星に生まれて来る前のきみがいた。
だけどそれは空想じゃない。本当にこの宇宙ではあらゆる時間が同時に存在していて、時間は過去から現在にではなく、未来から降り注いでいるって知っている。
ぼくらはこの宇宙の瞬き、瞬キッズなんだって。そんなこと信じられる?
ぼくの頭がおかしくなったというなら、どうしてぼくらは死んでしまうんだと思う?
だってぼくらは遊びに来たんだから、おしまいがなければ飽きてしまうからね。」
そんなことが、ロックンロールになった曲。
モリちゃんとはなえもんと3人でやっていた「プリーズ!」というバンドで生まれたけど、そのバンドはなくなってしまった。いろんなことは不思議な糸で繋がっている。
MVでは20年くらい前のライブ映像と、現在のレコーディング風景が交差する。
この曲だけ、ギターアンプはJC120を使用。なにしろJCのコーラスが一番星の瞬きみたいな音をしていますから。
3.「往復書簡」
常盤ゆうのソロアルバム「風のガーランド」(2021 redrec/sputniklab)のために楽曲提供した、ヒライマサヤ作の曲をセルフカバー。常盤さんはマーガレットズロースを結成した早稲田大学の音楽サークル、MMTの1学年上の先輩。ヒライとは誕生日が1日違いで、毎年6月のお互いの誕生日にメールを交換するのがいつからか恒例になっている。
2002年頃のマーガレットズロースの演奏をイメージして書いたわりに、ももちゃんからは
「常盤さんバージョンの方がズロース感がある」と言われていましたが、実際どうでしょう?
ぜひ常盤さんのバージョンと聴き比べてみてください!
常盤さんのバックでマーガレットズロースが演奏するのが一番しっくりくるのかもしれない。
圭作さんのオルガンがかなりいい効果を生んでいます。
4.「つづきはぼくらが」
2007年に自主制作したソロライブ音源「平井正也、おおいにうたうCD-Rvol.1」で渡辺勝さんとの演奏が収録されているが、マーガレットズロースでは演奏したことがなかった。当時、新曲はまずスタジオで弾き語りしていた。ずっと同じコード進行だから退屈でボツになったんだと思う。
2007年といえば「ぼーっとして夕暮れ」がリリースされた年で、フィッシュマンズの影響が一番濃かった時期。人が何かをやり遂げて一生を終えるなんてことはほとんどないはずで、つづきを待ってるかけらが、そこら中にちらばっているように見えた。
「石ころ」というワードは「バンドパワー 」にも出てくる、このアルバムのひとつの鍵かもしれない。
ぼくも長らく忘れていた曲だったけど、いまではパソコンでバンドアレンジをして聴かせられるようになり、16年の年月を経てようやく理解されて、収録されることに。
夏目くんのダブミックス、圭作さんのキーボードアレンジも光っています。
5.「つばき」
アルバムの中で一番新しい曲。ももちゃんから、アルバムは新曲と過去の未登録の楽曲と半々という意見が出ていたが、できるだけ新曲でやらないと、アルバムを作る意味がないと思っていた。だけど曲が足りない、急いで作らなければ。それで最近発見した「散歩作曲法」を実践して作った。言葉やメロディーが浮かぶまで、ただ歩くというシンプルな手法だ。
特別うたいたいことがあるわけじゃなくたって、ただ見えるものをうたえばいいじゃないか。
まるで「バンドパワー 」の歌詞そのままだけど、同じ道でもなにを見ているかは人それぞれだし、いろんなものが見える中でなにを「うたわない」かということも重要になって来る。
「いぬのくそ 洗濯物 カラスの羽」「庭先の金柑の実 ゴミ屋敷」シンプルにいえば美醜のコントラストで浮き彫りになる日常を、サウンド面でもアコースティックギターとファズギターで表現した。(ドレスコーズ志磨遼平さんのアコギをお借りしました。東京くんと名付けられたギブソンのギター、ありがとうございました!)
地味な曲だし、レコ発ライブでははずされそうになったけど、ここでやらないと、今後やる機会はなさそうだと思い披露。意外にも評判がよかった。
6.「働く人」
二日間のレコーディングで最初に録った。ギター、ベース、ドラムだけで、ダビングがなく、ギターソロもない。バリエーションに富んだ楽曲の中で、真ん中に位置していそうな曲だったから、今回のサウンドを決めるのにぴったりだったのだ。何度かライブでやっていたけど、レコーディングして初めて岡野がすごく変なプレイしていることに気がついた。さすがです。
後半、ちょっとだけタンバリンが入ってますが、ビートルズの「ドライブ・マイ・カー」みたいで気に入ってます。2022年の1月作曲。「探していたものは 恋じゃなかったから」という部分は、このアルバムの重要な宣言文。
7.「コントローラー」
平井正也BANDのアルバム「届く光」(2017年 nëlcö records)に収録されているが、時々マーガレットズロースでも演奏していたロックナンバー。映画「アリ地獄天国」(土屋トカチ監督)の主題歌として、平井正也BANDのバージョンではなく、より荒々しいマーガレットズロースのライブテイクが採用されている。今回のレコーディングでも、ほとんどライブレコーディングと変わらない方法で、クリックを使わずに一発録音された。
脱退したギター、熱海裕司が弾いていたフレーズを、ほぼそのままヒライが弾いている。
岡野がなかなか貸してくれないビンテージのレスポール、今回のレコーディングで活躍しました。ありがとう!
レコーディングして初めて気がついたシリーズ。この曲のサビのバスドラム、微妙なところに入ってるけど、間違ってるわけじゃないと思う。たぶん。
「つばき」「働く人」「コントローラー」の流れがかなり気に入っています。
8.「呑気だね」
今回の収録曲の中で一番古い曲。おそらく1999年か2000年の作。4thアルバム「ネオンホール」のインストアライブ用特典音源に収録されている。呑気な歌詞だが、実は大学卒業を控えて、就職活動もせず、バンドを続ける決意がうたわれている。事あるごとに岡野がフェイバリットに挙げているので、モチベーションを上げる目的でももちゃんが推した。
岡野のレスポールを借りてヒライなりのニール・ヤング節を炸裂させました。
「つばき」と並びアルバムのフォーク・ロック色を象徴する曲だが、残念ながらレコ発ライブではこの曲だけ演奏されなかった。
9.「歌にしようと思った」
「つばき」と同時期に作曲。この曲でも「ナナナ」が大事な歌詞になっている。「ラララ」でも「パパパ」でも「ダダダ」でもなく「ナナナ」。もしも歌になるなら「ナナナ」がいいな。
スタジオで3人で完成させたかったが、満足にアレンジする時間もなくレコーディング。
レコ発ライブではすでにちょっとアレンジが変わっていたけど、初々しいアルバムのテイクもそれはそれで良いと思う。まだ観ていないサニーデイ・サービスの映画で曽我部さんが「昔はライブでもレコーディングと同じ演奏を目指していたけど、いまはそれだけが正解じゃないと思う」みたいなことを話していたと、人から聞いたし。すいません、ぼくも観に行きます。
これからライブでもっと良くなっていったり、長くなったりしそうな予感。
10.「午前中ずっと寝てたから」
2022年のバースデーライブで初披露した曲。年齢を重ねて、いままでみたいにできなくなることもあるけど、やれるやりかたでやりつづけるしかないよねって開き直れば、それはそれでごきげんなロックンロールですよね。
ボツになりそうな気配もあったけど、圭作さんの軽快なロックンロール・ピアノのおかげで生まれ変わりました。「食べよう 眠ろう 愛し合おう」という歌詞は、先日のヒライマサヤ個展のタイトルにもなりました。
ラスト2曲の曲順は絶対これがいい!と主張した、大事な流れです。
11.ずっとこうしてるだけで(猫と日常)
2022年2月、秋葉原クラブグッドマン。熱海くん脱退後最初のライブで初披露した曲。
まだ熱海くんが入る前の、2003年くらいのマーガレットズロースが演奏してそう。
2020年、ステイホームの真っ最中に我が家に猫がやって来た。まさかうちに猫がいるなんて。いまでもたまにまだ信じられないくらい、しあわせすぎる。けれどしあわせだなーと思うと同時に、少しだけ、永遠には続かないとも感じている。
途中でベースが大きくなるような気がしますが、岡野のベースはあるポジションで非常に元気に鳴るので気のせいじゃありません。この隙間の感じはマーガレットズロースならではだよな〜
(猫と日常)というサブタイトルは、「猫という単語があるかないかで再生回数が全然違うから!」と岡野が力説するので付け足しました。
この曲が終わって、アルバムが終わる感じがたまらなく好きです。
みなさん、どうか42分間。マーガレットズロース「NANANA」とお付き合いください。
きっともう一回、さらにもう一回、再生してしまうような素晴らしいアルバムですから。
_________________
というわけで、めでたく本日「NANANA」発売されました!
勝手に書いてた誕生秘話の連載もこれでおしまい。
いやあ、長い道のりでした〜
これからNANANAレコ発ソロツアー「歌になろうと思った」がはじまります。
みなさんに直接「NANANA」を届けられるのをたのしみにしていますー!
マーガレットズロース 「NANANA」
今日から各種配信サービスもスタート!
ナナ何度も聴いてくださいー👂彡👂彡👂彡
https://linkco.re/P9RQfEmh
瞬キッズMVはこちら!
https://www.youtube.com/watch?v=trP1lBiHQ94
- 2023.08.02 Wednesday
- ひらい
- 20:55
- comments(0)
- -
- -
- -
- by magazuro-blog